温故知新
新「会社法」の要点
今まで、「会社法」という名前の法律はありませんでした。従来から「会社法」と言っているのは、商法の中に規定されていた会社に関する規定(商法第二編<会社編>)を「会社法」と言っていたのです。この中では、株式会社、合名会社、合資会社について規定されています。実際の会社法の範囲には、商法の会社に関する規定のほかに、商法特例法(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律)、有限会社法(主に小企業を対象にして簡易形態として制定された法律)などの会社に関する商事特別法があり、これらを含め総称して「会社法」と言っているのです。
平成17年6月29日に参議院を通過し、平成18年4月ないしは5月に施行が予定されている「会社法」は、新たな独立した法律であり、今までの会社関連法規の内容を大幅に改正した会社に関する法律です。今回の法改正によって、商法第二編、商法特例法、有限会社法等が一つの法典になって、「会社法」として商法典から独立することになったのです。
新「会社法」の要点は、以下の通りです。
1.最低資本金制度の撤廃
株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が廃止され、
1円で株式会社の設立ができるようになりました。
−新法施行前に、特例により1円で設立した会社の取り扱い−
臨時的な措置である中小企業挑戦支援法(新事業創出促進法:平成
15年2月施行)の特例によって、最低資本金規制を受けず1円でも株式
会社・有限会社を作ることができました(1円会社)。この特例を利用し
て設立される会社を確認会社といい、株式会社を確認株式会社、有限
会社を確認有限会社といいます。 この法律によって設立された会社
(確認会社)は、会社法施行後も、そのまま存続できます。
ただし、確認会社の場合、設立の日から5年以内に資本金を、株式会
社の場合は1千万円に、有限会社の場合は3百万円に増資しなけれ
ばなりません。
しかし、資金的に増資はできないといった場合は、会社法が施行にな
ったあと、定款の変更によって、確認会社を、新法が適用される通常
の株式会社に移行すれば、資本金は確認会社当時のままで継続でき
ます。
2.有限会社の廃止
有限会社をなくし、株式会社に一本化されました。新たに有限会社は
設立できなくなります。
合名会社、合資会社は従来どおり設立可能です。
ただ、合名会社、合資会社は、いわゆる無限責任という形をとっており、
もし会社に負債があれば、会社の財産以外に、個人の財産までその責
任が及びます。そのため、リスクの多い合名会社、合資会社は、現在で
はほとんど設立されていません。
−現存する有限会社の取り扱い−
名前の紙はどこから来たの
有限会社は、新会社法施行後は新設できなくなりますが、現在設立さ
れている有限会社は、何も手続きをしない場合は、「有限会社」の商号
をつけた株式会社となります。これを「特例有限会社」といいます。
この場合、有限会社のメリットである
・ 決算公告が不要
・ 取締役の任期制限なし
がそのまま適用されます。(ただし、いつまで大丈夫かは未定)
商号に今までどおり「有限会社」という文言が入ることに抵抗が無けれ
ば、なにも会社法に対してアクションを起こす必要はありません。
また、株式会社という表示にしたい方は、現在の有限会社は新会社法
施行後に「株式会社」に商号変更することが可能です。
手続きとしては、定款の商号変更を株主総会で決議し、有限会社の解
散登記と株式会社の設立登記を行うことにより商号変更を行います。
3.合同会社(日本版LLC)の新設
有限責任型の小規模会社として「合同会社」(日本版LLC)制度が導入さ
れます。
LLCのフルスペルは、Limited Liability Company(リミテッド・ライアビリティ・
カンパニー)で、直訳すると、責任に制限がある会社という意味です。
「合同会社」は、有限責任(出資者が出資の範囲内で責任を負う)で役員
の権限や利益配分などを持分に関係なく自由に決定でき、取締役、監査
役などの設置も不要です。
4.会社設立手続きの簡素化
○会社設立時にチェックする必要のあった類似商号に関する規制を撤廃
「同一市町村内において同一の営業目的で同一または類似した商号
は登記できない」という規制が撤廃されます。
そのため、登記に際して類似商号の有無などを調べる作業は不要となり
ます。
なお、会社法の施行日後も、会社法の施行日に施行される「整備法」
(平成17年法律第87号:会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する
法律)によって商業登記法も改正されます。整備法による改正後の商業
登記法第27条によると、同一場所における同一商号の登記は、行なう営
業のいかんに関わらず、禁止されまするので、同一本店所在地に同一
の商号の会社があるかどうかを調査する必要はあります。同一場所の
会社は、例えば� �ライブドアーが入っている六本木ヒルズ内に、同名の新
会社ライブドアーを設立するというように、同じテナントビル内にすでに存
在する会社です。会社法施行日後も、引き続き、商号調査簿は登記所に
おいて無料で閲覧できるようにする予定だそうです。 また、解散中の会
社と同一の本店所在地に同一の商号は、現在は登記可能ですが、新会
社法施行後はできなくなるようです。
○発起設立の際の払込金保管証明が不要
これまでは、株式会社を設立・登記するにあたっては、株式会社の資本
金額が正しく払込取扱金融機関に払い込まれていることを金融機関が
証明した「払込金保管証明書」を得る必要がありました。
しかし、新「会社法」では、発起設立の場合に限り払込金保管証明は
不要となり、銀行等の残高証明でよいことになります。
フランチャイズ税とは何か
払込金保管証明書は、どこの銀行でももらえるのが原則ですが、
実際には、銀行は払込金保管証明書を発行するのを嫌がります。その
理由は不明ですが、実務で、会社の設立について苦労する箇所です。
払込金保管証明書が不要になり、残高証明書だけでOKになれば、会社
の設立、あるいは増資は簡単に行えることになります。
ただ、実務的な疑問として、設立時の資本の払い込み段階では、会社は
設立されていませんので、残高証明は、会社名義で入手することはでき
ません。発起人個人名義の口座で入手するのだと思います。なお、発起
設立ではなく、募集設立の場合は、株式申込人保護のため、これまでど
おり払込金保管証明書が必要です 。
(発起設立)
設立に際して発行する株式の全部を発起人が引き受ける方法。
(募集設立)発起人は設立に際して発行する株式の一部だけを引き受
け、残りは他の株主を募集する方法。
(注)会社設立に関しては、法的には年齢制限はありませんが、設立手続
に必要な「印鑑証明」の登録に関して年齢制限(15歳以下NG)がある
ので、事実上は15歳以下の者による会社設立はできません。
5.取締役・監査役等の機関設計が柔軟化
会社の機関(取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、株主総
会など)を組み合わせることを「機関設計」といいます。
この機関設計について、定款に「すべての株式の譲渡について取締役会
の承認を要する」と定めている「株式譲渡制限会社」では、会社の実情
やレベルに合わせた柔軟な設計ができるようになりました。
理事・監事
取締役・監査役というのは、会社の役員のことであり、会社以外の団体
の役員は、理事・監事といいます。理事は、会社でいえば取締役に相当
し、監事は、会社でいえば監査役に相当します。
執行役と執行役員
執行役とは、委員会等設置会社において会社の業務執行の決定・実施
する会社法上の役員(登記必要)です。委員会等設置会社とは、大会社
で導入できる企業の統治制度(コーポレートガバナンス)です。取締役会
の中に社外取締役が過半数を占める委員会を設置し、取締役会が経営
を監督する一方、業務執行については執行役にゆだねることで、経営の
合理化と適正� ��を目指すものです。
執行役員は、会社法上の役員ではなく、会社の任意の役員(登記不要)
です。取締役が意思決定を行うのに対して、執行役員は取締役の業務
執行を補助し、実際の政策執行に責任を持つ使用人です。
○取締役1人での会社設立(株式譲渡制限会社)
設置が義務付けられていた取締役会の設置が任意とされました。
取締役会を置かない場合には、取締役の人数は最低1名でもよいとさ
れました。
取締役会を置く場合は取締役は3名以上必要とされます。
取締役の任期についても、現行では取締役2年、監査役4年ですが、
定款で定めれば各々最長10年まで延長が可能です(再任可)。
○監査役の任意設置(株式譲渡制限会社)
開発の個人的な緊急なぜ
株式譲渡制限会社は、監査役の設置は任意となります。
株式譲渡制限会社の場合で、取締役会を置く会社では、取締役は3名
以上必要で、監査役の設置も必要となります。ただし、後述の「会計参
与」を設置すれば、監査役の設置は任意となります。
−株式譲渡制限会社−
株主となる者に制限を加えることができるように、定款に「株式の譲渡
については取締役会の承認を要する」旨を定めて、会社の承認がなけ
れば株式を譲渡できない会社をいいます。
中小の株式会社では、自社にとって好ましくない人が株主となるのを
防ぐために、株式の譲渡制限を設けている例が多くあります。
「株式譲渡制限」とは、株を発行した会社がその株主に対し、保有株式
の第三者への譲渡を制限することです。その目的は、好ましくない人が
会社経営に参加するのを防ぐことにあります。
特に、同族会社など株主が少ない中小企業では、各株主が持つ株式
の割合が大きいため、ある株主が誰かに株を売ってしまうと、全く知ら
ない人が突然大株主となるといったことも考えられます。
このような事態を防ぎ経営を安定させるために、株式譲渡制限� ��制度
が設けられているのです。
*「譲渡」とは、権利や財産などを他人に譲り渡すことです。タダで譲る
こととは限りません。譲渡には対価として金銭を要求する「売買」、金銭
以外のものを要求する「交換」、金銭などを要求しない「贈与」などがあ
り、これらを総称して「譲渡」といいます。
−公開会社以外の会社(株式譲渡制限会社)−
さて、新会社法では、株式譲渡制限会社以外の会社を「公開会社」と
いいます。したがって、家族や親族などが株主となっている同族会社は
通常は、「公開会社以外の会社」となります。「公開会社以外の会社」
とは、株式譲渡制限会社のことです。
この「公開会社以外の会社」には、相続時に金庫株が取得しやすいよ
うに手続きの特例が設けられています。
一例をあげると、定款で定めることにより、会社側から相続人に対して
株式の売渡請求をすることができるようになります。つまり、会社側に
とって都合の悪い株主から株式を買い取ることができるようになり、
相続人の間のトラブルの回避に役立ちます。
このように、新会社法では、「公開会社」と「公開会社以外の会社」とに
分けることで、中小企業に対する配慮をしています。その結果、同族
会社の事業継承対策については、手続き面で使い勝手の良いものに
なりました。
6.株主総会の重要性が高まった
会社が取締役会を設置しない場合、会社にとっての重要事項をはじめ
とするいかなる事項も株主総会で決議することになります。
各取締役への監督機能も株主総会が果たすこととなり、株主総会の権
限が強まります。株主総会の重要性向上にあわせて、株主総会を開
催しやすくするための改正が次のとおりに行われています。
a 株主総会の招集通知は会日の1週間前(定款で短縮可能)までに通
知すればよく、
b 招集通知は書面や電磁的方法によらなくてもよい(口頭や電話等で
もよい)。
c 開催場所も、「本店所在地またはその隣接地」という制限が廃止さ
れ任意に決められる
d 株主には単独での議案提案権が認められる
取締役1人の会社は、取締役会を設置しない株式譲渡制限会社です。
この場合は、取締役会は開催しようがありませんので、重要事項は、
株主総会で決めます。
家族や親戚などが株主となっている同族会社や、気心の知れた人間
だけが株主となっている会社では、株主総会といっても家族会議や
茶飲み会程度のことが多く、株主総会の運営の省エネ化が図られて
います。
7.会計参与制度の創設
「会計参与」とは、会社の取締役、執行役と共同して計算書類を作成
し、また保存し、株主や会社債権者に開示することが職務とされ、株式
会社が任意に設置できる新たな機関です。
会計参与になれるのは、会計に関して専門的識見を持つ税理士(税理
士法人を含む)、公認会計士(監査法人を含む)です。株式会社又はそ
の子会社の取締役、監査役、執行役、支配人、その他使用人は、会計
参与になることはできません。
税理士・公認会計士等が、会社の役員である「会計参与」として会社サ
イドの立場で決算書等を作成することができます。
会計の専門家が計算書類の作成に関与することで、これまでとかく信
頼性に欠けると批判の多かった中小企業の計算書類の信頼性を高め
ることを目指して創設されます。
新たな税理士業務として注目されている会計参与ですが、社外取締役
と同様の規律が適用され株主代表訴訟の対象にもなり、その責任は
大変重いものとなっています。株主代表訴訟とは、簡単にいうと、株主
が会社に代わって取締役等の経営責任を追及する訴訟です。
会計参与を置くには、定款で会計参与を置く旨を規定する必要があり
ます。会計参与は会社の役員ですから、株主総会で選任されます。
任期は原則として2年、定款で定めれば10年まで延長できます。再任
は可能です。
※株式譲渡制限会社では、取締役会を置いた場合には、監査役を置
かなければなりませんが、監査役の代わりに会計参与を置いてもよい
とされています。また、監査役のいる会社で会計参与を同時に置くこと
もできます。
8.その他
・適時に正確な帳簿を作成しなければならないことが明文化されまし
た。
・株券は原則不発行とされ、定款に定めのある場合のみ発行できるこ
ととされました。
・小規模会社でも社債発行による資金調達が可能になりました。
・会社の製品を現物配当することが容易になりました。
・合併や会社分割の手続きが容易になりました。
会社法(条文は下記のサイト)
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