『AKIRA』(アキラ)は大友克洋による漫画。講談社発行の漫画雑誌『週刊ヤングマガジン』で連載。アニメ映画化(1988年)、ゲーム化もされた。
近未来の荒廃した世界を描いたSF作品であり、緻密でリアルな描写や演出などが話題となり、漫画・映画共に大ヒットしたSF漫画の金字塔。題名の「AKIRA」は大友自身がファンであり、影響を受けた映画監督黒澤明に由来する。題字の毛筆による書は漫画家の平田弘史によるものである。
単行本は週刊誌と同じ大判サイズに小口への色付けを施すなど、凝った装丁になっている。日本国外ではアメリカンコミックのスタッフが着色した外国語版が流通しており、これを日本語に逆翻訳したものが『国際版AKIRA』及び『総天然色AKIRA』として日本で発売された。
アニメ映画の制作費には当時の日本のアニメとしては破格の10億円をかけている。制作手法としてアフレコではなくプレスコを採用している。通常リミテッドアニメーションでの人物の口の動きは3種類であるが、この作品では母音の数と同じ5種類で描かれている。音楽は芸能山城組が担当した。この映画は日本のみならず日本国外でも大きな人気を集めた。ビデオ化に際しても多くのカットに手を加えたり、音楽関係に手を加えており、今なお進化し続けている作品である。
現在、実写映画化が進行中。詳細は#実写版映画の項を参照。
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[編集] ストーリー
1982年(劇場版は1988年)東京は「新型爆弾」により崩壊。これが世界大戦のきっかけとなり、世界は荒廃していった。
[編集] 1巻
2019年。東京湾上には、超高層ビルが林立する新首都・ネオ東京が建設されており、その繁栄は爛熟の極に達していた。いまだ再建されていない旧東京(「旧市街」)でも東京オリンピック開催を機に再開発工事が進められようとしていた。金田正太郎率いる暴走族の少年たちは、ネオ東京の外の「旧市街」へと続く遺棄されたハイウェイに入り込んで疾走していたが、「爆心地」付近でメンバーの島鉄雄のバイクの前に突然白髪の少年が出現したため、鉄雄は事故を起こし重傷を負ってしまう。謎の少年は、軍の超能力研究機関から、ゲリラによって連れ出された超能力者タカシであった。
鉄雄はタカシと共に軍の研究機関に連れ去られ、そこで超能力が目覚め始める。退院後、金田の前に戻ってきた鉄雄は、もはや以前のようなおとなしい少年ではなく、狂暴な性格に変貌していた。金田は軍によるゲリラの追跡騒ぎの最中に、超能力研究の秘密を追う反政府ゲリラのメンバー、ケイと知り合い、ともに鉄雄の行方を追う。金田は、敵対する暴走族・クラウンの頭に納まった鉄雄に対して、他の暴走族も糾合して攻撃を試みたが、鉄雄はかつて暴走族の仲間であった山形を惨殺し、以前から劣等感の対象であった金田にも敵意をむき出しにする。
[編集] 2巻
暴走族の抗争は軍により制圧され、鉄雄や金田らは敷島大佐によって軍の研究機関「ラボ」が入る超高層ビルに連行される。そこにはタカシ(26号)、キヨコ(25号)、マサル(27号)という、国家の超能力研究プロジェクトで能力を開発された、老人のような顔をした子供たち(ナンバーズ)も住まわされていた。薬物を投与されながら能力を開花させつつあった鉄雄は、超能力研究の核心にある「アキラ」(28号)に強い関心を持つ。ナンバーズの子供たちの仲間であったアキラは、政府や軍が巨費を投じてその存在を封印し続けており、野党はその存在を追及しようとしていた。一方ラボを訪れた大佐に対して、予知能力を持つキヨコは、アキラの目覚めとネオ東京の崩壊が間もなく起こることを告げる。
鉄雄はラボを脱走して、旧市街の爆心地に建設中のオリンピックスタジアムの地下にある軍の施設を襲い、絶対零度で冷凍されていた少年「アキラ」を連れ出してしまう。大佐はレーザー衛星「SOL」を使って攻撃を試み、鉄雄は片腕を失い行方不明になったが、アキラはケイと金田によって保護されネオ東京へとかくまわれた。爆心地の地下に冷凍施設があったことから、ケイらは東京を破壊したのは新型爆弾ではなくアキラだったと知ることになる。
[編集] 3巻
連れ出されたアキラをめぐって、アキラを特別な存在と考えるミヤコの教団および、アキラを取り返そうとする軍との争奪戦が始まる。ケイたちからアキラを預かった野党党首の根津は、支援者であるミヤコの教団も、部下であるゲリラも裏切り、自らの政治的野望のためにアキラを利用しようとするが、ケイや竜、チヨコ、金田らは逃げ延びてアキラを根津の元から誘拐する。この事態に際しても、与野党の醜い政争が続く現状に業を煮やした大佐はクーデターを決行し、戒厳令をネオ東京に敷いて軍を出動させアキラを追う。
根津の私兵、ミヤコの教団が独自に開発した超能力者、軍、金田たちによるアキラ争奪戦は早朝の運河で金田らが軍に追い詰められたことで幕を閉じる。大佐の連れてきたナンバーズの子供たちが、30年以上ぶりの再会のためにアキラの回りに集まるが、廃屋からアキラの頭を撃とうとした根津の弾丸はタカシに命中してしまう。ナンバーズやアキラたちの頭にショックが走り、やがてアキラは37年前に東京を壊滅させた能力を解放した。アキラを中心に光が発生し、巨大な大爆発が起こりネオ東京は完全に崩壊する。ケイや大佐らはナンバーズの子供らによる瞬間移動で助けられたものの、金田は光に飲み込まれて行方不明になる。
ネオ東京崩壊後、一人爆心地にいたアキラの前に、SOLによる攻撃を生き延びていた鉄雄が現われる。
[編集] 4巻 - 6巻
廃墟となったネオ東京は政府も軍も失われ無政府状態となっていた。鉄雄はアキラを「大覚」に祭り上げて「大東京帝国」という集団を作って被災者を集め、外部からの接触を拒み、孤立した集団を築いていた。鉄雄は帝国の構成員にも薬物を投与し超能力者を育てていた。一方でミヤコの教団は被災者に食糧や超能力による治療を与えてもう一つの勢力を築いており、ケイらゲリラの生き残りやナンバーズらも教団にかくまわれていた。鉄雄はやがて薬物でも自らの力を抑えられないようになる。
ネオ東京沖合のアメリカ軍艦隊の空母ではアキラを巡る現象を調査する「ジュブナイルA」計画の科学者たちが監視していた。ネオ東京の廃墟では、切り札であるSOLの発射ボタンを持ってアキラと鉄雄を自らの手で始末しようという大佐、アキラを抹殺するため特殊部隊を率いて上陸したアメリカ軍とゲリラの生き残りである竜のグループ、鉄雄に遺恨を持つ元クラウンのリーダー・ジョーカーと甲斐のグループらが、それぞれ大東京帝国へと迫る。鉄雄が自らの超能力のことを問うためにミヤコの元をひそかに訪れていた頃、大東京帝国は隊長の独断によりミヤコの教団を襲い激しい戦闘となる。鉄雄は大佐の放ったSOLのレーザーにトラウマを刺激され、能力の爆発的覚醒を起こして空中からネオ東京崩壊時の残骸を出現させ、金田も残 骸と共に地上へと帰還する。